管理職に求められる役割は数多くありますが、なかでも職場の人間関係を良好に保つことは、重要な役割のひとつといえるのではないでしょうか。人間関係の悪化は、企業にさまざまな悪影響をおよぼします。本記事では、人間関係の悪化が職場におよぼす影響や、人間関係を悪化させないポイントなどについて、管理職が意識しておきたいことをまとめました。

職場の人間関係はパフォーマンスに影響を与える?

職場の人間関係を良好に保つことは、企業の生産性やパフォーマンスにどのような影響を与えるのでしょうか。

カオナビHRテクノロジー総研が、20代から60代の社会人600名に対して行った「上司と部下の関係性に関する調査」によると、「上司からの理解が仕事のパフォーマンスに良い影響があるか」という質問に対して、約61%の人が「影響がある」と回答しました。この質問を20代に限った場合、約80%が仕事のパフォーマンスに影響があることを認める結果となっています。上司から理解を得られているかどうかで、仕事へのパフォーマンスやモチベーションが大きく左右されることがうかがえます。

また、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が行った「若年者雇用実態調査」によると、初職が正社員であった早期離職者の離職理由として、「人間関係がよくなかった」と回答した人の割合は22.7%でした。これは、離職理由の1位「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」に次ぐ2位に位置しています。

職場の人間関係の悪化が従業員の離職を招くことは、おそらく誰もがうすうす感じているでしょう。上記の調査は、それを裏付けるデータといえそうです。

人間関係が良好に保たれている職場では、上司と部下、また同僚同士でコミュニケーションが十分にとれているため、業務上のやりとりも速やかに行うことができます。また、打ち合わせや会議の際にも忌憚(きたん)なく意見交換ができるため、課題解決や目標達成までの道のりもスムーズでしょう。こうした環境は、従業員のパフォーマンスを向上させ、企業全体の生産性を向上させることにつながります。

職場の人間関係は、従業員のモチベーションやパフォーマンスに影響を与えるだけでなく、場合によっては離職を招く原因ともなりかねません。企業が安定して成長していくためには、職場の人間関係を良好に保つことが非常に重要であるといえるでしょう。

職場の人間関係を良好に保つために心がけたい、6つのコミュニケーション

職場の人間関係を良好に保つためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。ここでは、業務をすすめるうえで日々心がけておきたい、6つのコミュニケーションをまとめました。

1. あいさつを徹底する

ごく初歩的なことですが、やはりあいさつはすべてのコミュニケーションの基本となるものです。朝、出社したときに笑顔であいさつすることで、職場の雰囲気が明るくなり、気持ちのいいスタートが切れるでしょう。

まれに、自分からあいさつをしない人もいます。あいさつをしないままでいるとどことなく気まずくなり、続く言葉が出てこなくなります。そうなると業務上のやりとりもぎこちなくなり、互いに協力し合うことが難しくなるでしょう。

あいさつのあとにちょっとした会話をつなげて、軽くコミュニケーションができれば理想的ですが、口下手な人はあいさつだけでも確実に徹底させるようにしましょう。職場の人間関係を良好に保つためには、まず従業員同士のあいさつを徹底させることが重要です。

2. ミスしたときは素直に謝る

仕事のミスは誰にでもあるものです。ただ、ミスをしたことに対して反省せず、言い訳をしたり、他人や状況のせいにしたりするべきではありません。こうしたことを繰り返すと、他人からの信用を失い、職場の人間関係を悪化させることになるでしょう。

ミスの原因が本当に状況や他人にある場合もあります。限られた時間で膨大な仕事をこなさなければならなかったり、そもそも指示が間違っていたりするケースもあるでしょう。ただその場合も、自分に本当に原因はないのかを考え、まずは素直に謝ることが大切です。素直にミスを認めれば、大抵のケースでは受け入れられるでしょう。ミスの原因をしっかりと突き止め、今後は同じミスを起こさないという姿勢も重要です。自分の評価を高めることにつながります。

3. 感謝の気持ちは小さなことでもしっかり伝える

「ありがとう」のひと言は、どんな状況でも気持ちがいいものです。自分の作業を手伝ってもらったり、業務の進め方についてアドバイスを受けたりしたときには、必ず感謝の気持ちを伝えましょう。

感謝されたくて仕事を手伝ったわけではなくても、相手から「ありがとう」のひと言がないと、「せっかく手伝ったのに」という気持ちがわいてくるものです。助けてもらった相手に感謝の気持ちを伝えないでいると、次に同じような状況が生じたときに誰も手を差し伸べてくれなくなるかもしれません良好な人間関係を築き、今後の仕事を円滑に進めるためにも、小さなことでも感謝の気持ちはしっかりと伝えることが大切です。

4. 相手の話をしっかりと聞く

相手との関係を良好に保つためには、話をしっかり聞くことも重要なポイントです。忙しいときは余裕がなく、相づちが適当になったり、パソコンの画面を見たまま返事をしがちになったりしますが、相手からすれば気持ちのよい態度とはいえません。特に業務に関する重要な話であれば、おざなりに対応されたと感じて相手は怒ってしまうかもしれません。

相手から話しかけられたときは、まずしっかりと顔を見てコミュニケーションをとることが重要です。どうしても忙しい場合は、いまは手が離せないからあとで時間をとることを伝え、臨機応変に対応するのもひとつの方法です。

5. 報連相を確実に行う

仕事を円滑に進めるうえで、「報連相」(報告・連絡・相談)は非常に重要です。報連相をおろそかにしていると、同じプロジェクトに取り組んでいるチームメンバーや、同じ仕事を共有している同僚に迷惑がかかることになります。

仕事のミスは状況によって「仕方がない」と許される部分もありますが、連絡や報告、相談をせずに仕事を進めて迷惑をかけてしまうと、チーム内の不満が一気に高まり雰囲気を悪化させてしまいます。こうした状況で良好な人間関係を維持するのは難しいでしょう。報連相は誰でもできるビジネスの基本です。確実に行い、不要なトラブルを避けることが重要です。

6. ネガティブな発言を控え、ポジティブな発言を増やす

仕事におけるネガティブな発言とは、上司や同僚に対する悪口や、業務に関する愚痴(ぐち)を指します。こうした発言は、たとえそれが自分のことでなくても好意的に感じられません。ネガティブな発言が広まれば、職場の雰囲気が悪化するだけでなく、自分の評価を下げることにもなるでしょう。

ただし、悪口や愚痴ではなく、職場や業務の課題について意見を述べることはネガティブな発言ではありません。どうすればより効率的に業務をこなせるか、どうすれば職場環境の改善になるかといった話題は、職場のためになるポジティブな発言です。こうした話題を率直に提供できる環境が構築できれば、人間関係も良好に保てるでしょう。

ここまで、職場の人間関係を良好に保つためのコミュニケーションについてまとめました。どのようなコミュニケーションが心地よいか、またどのような距離感が適切かは、人によっても相手との関係性によっても異なります。職場はあくまで仕事をする場ということを踏まえて、互いが心地よくいられて、またスムーズに仕事ができる適度なコミュニケーションを心がけることが重要です。

こうしたコミュニケーション力は、上からの指示で身につくものではありません。まずは上司やプロジェクトリーダーなどが率先して取り組み、こうしたやりとりがあたりまえになる職場の雰囲気づくりを行っていくことが重要です。

風通しの良い職場の特徴や具体的な取り組み、メリットについては、こちらの記事もご参照ください。

風通しの良い職場とは?特徴と取り組みをメリットと注意点を交えて解説

職場のコミュニケーションを良好に保つため、上司が心がけたいこと

部署内やプロジェクトチーム内のコミュニケーションを活性化し、人間関係を良好に保つためには、どのようなことに留意するべきでしょうか。職場のコミュニケーションを良好に保つため、上司やプロジェクトリーダーが取り組みたいことをまとめました。

上司から部下に話しかける機会を増やす

部署内やプロジェクトチーム内のコミュニケーションを活性化するためには、まず上司から部下へ話しかける機会を増やすことが重要です。部下から上司に対してコミュニケーションを図るのは心理的なハードルが高いこともあり、業務上必要な連絡でない限り話しかけにくいと感じている人も少なくありません。特に、これまで積極的に部下と会話していなかった場合、「とっつきにくい人だ」「怖い人だ」というイメージが定着してしまっていることもあります。

上司が部下に気軽に話しかけるようになると、部署内でコミュニケーションをとりやすい雰囲気が生まれます。そうなれば、業務上の不明な点を気軽に相談したり、小さなことでも報告したりしやすくなり、業務を円滑に進められるでしょう。

なかには口下手な人や、他人と積極的にコミュニケーションをとるのが苦手な人もいます。そのような人は話すこと自体にストレスを感じることもあるため、あまり積極的に話しかけすぎてもいけません。特に上の立場から話しかける場合は、コミュニケーションの量が適切か、相手はストレスを感じていないかを気遣うことも大切です。

※上司から部下に話しかける機会を増やすために、見直したいコミュニケーション

1. あいさつを徹底する

3. 感謝の気持ちは小さなことでもしっかり伝える

4. 相手の話をしっかりと聞く

部下の業務量に気を配る

部署内やプロジェクトチーム内の雰囲気を良好に保つためには、部下が抱えている仕事に気を配ることも重要なポイントです。通常、部下は抱えている仕事をこなすことに注力しており、優秀な人材ほど気づけば業務過多になったり、ストレスを抱え込んだりするものです。そのため上司は、部下の業務量が適切か、特定の人間に業務負荷が集中していないかをしっかりと管理する必要があります。

業務量があまりに多かったり、特定の人だけに負荷が集中したりしているような状況では、部下も余裕がなくなり、従業員同士のコミュニケーションに気を配ることができません。また、自分だけ多くの業務を抱えている状況では、同僚や上司に対する不満を感じることになるでしょう。こうした状況では、部署内の雰囲気を良好に保つことはできません。

部下の業務量を適正に保つためには、どの工程で時間がかかっているのか、また仕事の量に対して適切な作業人数が割り振られているかを把握します。コミュニケーションの視点からは、部下の話にしっかりと耳をかたむけ、報告や連絡、相談を受けやすい雰囲気づくりに努めることが大切です。また、普段しっかりと仕事をしてくれていることに対して、あらためて感謝の気持ちを伝えることも重要でしょう。

※部下の業務量に気を配るために、見直したいコミュニケーション

3. 感謝の気持ちは小さなことでもしっかり伝える

4. 相手の話をしっかりと聞く

5. 報連相を確実に行う

ポジティブな言動を意識する

上司やチームリーダーの言動は、良くも悪くも職場に大きな影響を与えます。仕事が忙しくストレスがかかるような状況でも、上司が先頭に立って業務に取り組んでいれば、部下も「〇〇さんが頑張っているなら自分も頑張ろう」と後をついてきてくれるものです。しかし反対に、上司が自ら汗を流すことなく、部下に対して無理難題を押しつけたり、高圧的な態度をとっていたりするとどうなるでしょう。職場の雰囲気が悪くなるばかりか、部下が後輩に対して同じような態度をとるようになり、負のスパイラルが生まれてしまうのです。

職場の人間関係を良好に保つためには、自らが率先してポジティブな言動を意識することが大切です。仕事が忙しくても前向きに取り組む姿勢を見せたり、部下に感謝の気持ちを伝えたり、あいさつなどのコミュニケーションを欠かさないようにすることで、職場にポジティブな雰囲気をつくることを意識しましょう。

※ポジティブな言動を意識するために、見直したいコミュニケーション

1. あいさつを徹底する

3. 感謝の気持ちは小さなことでもしっかり伝える

6. ネガティブな発言を控え、ポジティブな発言を増やす

社内の教育体制を充実させる

職場の教育体制がしっかりと整っていないと、特に若手や新人など経験の浅い従業員は、自分の能力以上の業務負担を強いられることになります。その結果、ミスが増えたり仕事が回らなくなったり、また先輩社員の負担が増えたりするため、若手・新人社員と先輩社員との間に溝が生まれることにもなります。当然ながら、こうした状況で職場の人間関係を良好に保つことはできません。

また、若手や新人は業務について学べず、常に不安を抱えたまま仕事をすることになるため、自信を失い、モチベーションの低下や離職を招く原因にもなります。

こうした事態を防ぐためには、社内の教育体制をしっかりと整備し、部下が自信をもって働けるよう教育することが大切です。自分のスキルや能力に自信がつけば、責任を持って仕事をこなせるようになるでしょう。部署内やプロジェクトチームの仕事がスムーズに回るようになれば、人間関係を良好に保つことにもつながります。

※社内の教育体制を充実させるために、見直したいコミュニケーション

1. あいさつを徹底する

4. 相手の話をしっかりと聞く

5. 報連相を確実に行う

6. ネガティブな発言を控え、ポジティブな発言を増やす

人間関係の悪化は業績の悪化にもつながる

職場の人間関係が悪化してしまうと、コミュニケーションがうまくいなかくなるだけでなく、従業員のパフォーマンスや生産性が低下し、業績の悪化につながるリスクもあります。日ごろから部下とのコミュニケーションを重視し、関係が悪化しないよう努めることが大切です。