職場のスローガンに掲げられることもある「風通しの良い職場」。就職活動の際に、これを条件に求める人も少なくありません。「開放的な職場」という意味合いで使われることが多いようですが、具体的にはどのようなものでしょうか。風通しの良い職場の特徴や実現させるための取り組みを、メリットや注意点などを含めて解説します。

風通しの良い職場 とは

「風通しの良い職場」とは、その言葉のとおり「社内の風通りがいい」、つまり組織内で意見や情報が通りやすいという意味合いで使われています。

といっても、「誰にでも自由に意見を言うことが可能である」ということではありません。社の規律のもと、働く人の意見を「聞く」仕組みの整った環境であるということです。社内の人間関係がスムーズであり、情報はオープン、誰もがのびのびと働ける職場を指しています。

風通しの良い職場の特徴とは

風通しの良い職場にはどのような特徴があるでしょうか。具体的に説明していきましょう。

コミュニケーションが良好

  • 職場には多様な人々がいます。皆ができるだけ人間関係のストレスなく快適に働けるよう、それぞれが相手の立場になって配慮できる「思いやりのある職場」では、社内コミュニケーションが取れていると言えるでしょう。
  • 上司だけではなく、部下が上司に対してであっても、一方的に自分の意見を押し付ける職場は、風通しが良いとは言えません。互いの立場を尊重したうえで、きちんと「会話のキャッチボール」をするよう心掛けている職場はコミュニケーションが良好です。

意見を言いやすい雰囲気

  • 部下や後輩が言いたいことが言えない職場から、いいアイデアは生まれません。若手が積極的に自分の意見を言えるような雰囲気づくりを意識している職場は活気もあります。
  • 立場に関わらず、それぞれが自分とは違う意見を頭から否定することはせず、まず聞く耳を持ってから精査する環境が理想です。各自の心掛けによって職場の雰囲気は変わるため、皆で意識していくとよいでしょう。

上司と部下の関係性がフラット

  • 互いに「遠慮」はしないけれども、「配慮」する関係性であることが大切です。フラットな関係性であると、迅速に情報の伝達と共有ができ、意志決定速度を早めることができます。
  • 世代間を越えた情報・意見交換がスムーズに進むと、新しいアイデアが生まれる場合もあります。

モチベーションを下げる社内ルールがない

  • 歓迎会や社内イベントなどの参加強要や、「上司が〇〇するまで××できない」などの現代に即さない暗黙の社内ルールがあると、働く人たちのモチベーションは下がります。過度な規制は従業員の自主性と組織の柔軟性を奪いかねないので、規定は組織運営に必要なものに留めましょう。
  • 個々の自主性に任せると生産性の向上につながる可能性が高まります。

風通しの良い職場の注意点

風通しの良い職場を作るうえで、注意しておきたい点がいくつかあります。

人付き合いが苦手な人もいる

多くの人々が集まる職場では、人付き合いが苦手な人もいます。直接的な会話よりもSNSでの会話に慣れている人や、コロナ禍でリモート中心の社会人生活をしばらくの間送らねばならなかった人もいるでしょう。いきなり社内の活発なコミュニケーションを目の当たりにすると、戸惑いや負担を感じてしまうかもしれません。

まず、会社は作りたい職場の方向性を従業員にきちんと説明すると同時に、どのような配慮が必要かを把握しておきましょう。適度な距離感を保てるよう、いくつかの方策を用意し、従業員に選択の余地を残しておくのも一案です。

組織の緊張感を欠く恐れがある

フランクになりすぎると、緊張感がなくなる恐れもあります。勤務態度や言葉遣いがルーズになってしまうと、社外の人への対応に影響を及ぼす場合も出てくるかもしれません。オープンでありながらも、適度な緊張感を保っておくとよいでしょう。

風通しの良い職場のメリット

オープンな職場になることで生まれる、多くのメリットをご紹介します。

生産性の向上

人間関係のストレスなく、のびのびと仕事ができることで、働く人たちのモチベーションは高まります。個々のパフォーマンスが上がることは、会社の業績向上にもつながっていきます。

従業員エンゲージメントがアップ

現代は、働き方も多様となり、会社への帰属精神が薄れ、従業員エンゲージメント(愛社精神)も希薄になりがちです。しかし、風通しの良い職場によって仕事がスムーズに運ぶようになると、働く人たちの満足度は高まっていくでしょう。退職の大きな要因である人間関係のストレスも軽減され、定着率も高まることが期待できます。

詳しくは「高くなると会社に悪い影響をおよぼすIT業界の離職率。その原因と改善方法」をご参照ください。

風通しの良い職場づくりの取り組み

実践している企業もある、風通しの良い職場づくりのアイデアをご紹介します。

1on1ミーティングを実施する

上司と部下が定期的に1対1で話す機会「1on1ミーティング」を実施し、職場の問題を把握・改善していきます。1on1ミーティングは人事評価面談と混同されがちですが、人事評価面談は部下の管理が主目的であるのに対し、1on1ミーティングは部下から意見や悩みを吸い上げるのが目的です。リモートであっても1対1で話す機会が増えると、互いの考え方や性格をより理解でき、相手の印象が変化していきます。1on1ミーティングで部下をよりよく知ることは、信頼関係を築くうえで大切な取り組みとなるでしょう。

社内アンケートを実施する

従業員の状況をさらに詳しく知るために、従業員のモチベーションや満足度などの度合い調査「組織診断(組織サーベイ)」を導入するところもあります。従業員エンゲージメントを可視化するエンゲージメントサーベイにも近い性質があり、多くは社内アンケート形式で、会社や仕事に対する従業員のエンゲージメントやモチベーションなどを測定します。社内アンケートでは、会社が従業員一人ひとりの状態をデータで把握できるという利点はありますが、一方通行になってしまわぬよう、従業員に調査意図をしっかりと説明し、理解を得ることが大切です。

社内交流の場を設ける

コロナ禍で機会は減っているものの、部活動や飲み会などの社内コミュニケーションは職場の風通しを良くする有効な方法のひとつです。例えば、スポーツの部活動を通して、社内であまり見られない上司の素の部分が垣間見えたとき、親近感を持ち、距離が近づく場合もあります。社内交流に対して補助金を出す会社もあります。

ITを含むコミュニケーションツールの導入

会社にSNSやチャットツールを導入することで、スピーディーに情報を共有することができます。また、直接話すのは苦手な人への配慮としても、ツールを通したコミュニケーション法を用意することは有効です。

従業員同士でお礼を言い合うときに用いる「サンクスカード」を採用する会社もあります。サンクスカードをデジタル化すれば、離れた部署や在宅勤務の人にもお礼を伝えられるので、導入する会社が増えているようです。

フリーアドレス制の導入

座席を決めなないオフィススタイル「フリーアドレス制」を導入すると、隣り合うことになったさまざまな人とコミュニケーシを取ることができます。立場や部局を越えた人たちとのふれあいによって、思わぬアイデアが浮かぶ可能性もあります。一方で従業員の居場所が把握しづらい場合もあるので、マネジメントには十分な注意が必要です。

風通しの良い職場づくりに成功した事例

実際に風通しの良い職場づくりに成功した事例を3つご紹介します。

1on1ミーティングの継続で部下の潜在能力を引き出す

大手インターネット企業ヤフー株式会社 では、1on1ミーティングを文化として浸透させたことで、風通しの良い職場づくりに成功しています。

実際の施策としては、「週に1回、30分間、場所を確保して部下の話を聞く」というシンプルなものですが、上司が話を聞いてくれる環境が整備されていることは、心理的安全性の確保に役立ちます。

1on1ミーティングは時に、「そんな時間を取ることなんてできない」「毎回毎回話すことなんてない」などと否定的な意見が出ることもありますが、コミュニケーションは頻度が重要との考えから実施。外部の専門家を招いてカリキュラムを企業風土に合うようブラッシュアップしたことも功を奏して、効果的な施策として根付きました。

社内SNSを積極的に活用してハードルを下げる

日本で初めての障害者を対象とする少額短期保険業者である、ぜんち共済株式会社 。社内SNSを積極的に活用することで、コミュニケーション全体のハードルを下げ、風通しの良い職場づくりにつなげています。

従業員同士が社内SNSを通じて共通の話題で盛り上がり、コミュニケーションが活性化されました。社内SNSで報・連・相がスムーズになったことにより、多くの従業員が社内でどんなことが起こっているのか、トラブルはないかなどを認識できるようになりました。それが従業員同士の助け合い文化にもつながっています。

社内報で社内コミュニケーション活性化を促す

インターネット広告代理店、GMO NIKKO株式会社では、コロナ禍のコミュニケーション不足などの課題に対応するため、既存のものより、より活用しやすい新しい社内報システムを導入。過去の社内報の内容を分析しながら、より読んでもらえる社内報にブラッシュアップしていきました。具体的には全従業員参加型の社内報をめざし、自己紹介や従業員の表彰、社内のイベントなどを掲載するだけでなく、「ノウハウ」や全社に向けての広報といったあらゆる情報の共有の場として活用しています。Web社内報であるため、従業員が気軽にコメントやリアクションをしやすい点も良い影響を与え、組織全体のコミュニケーション活性化に成功。風通しの良い職場づくりにつなげています。

風通しの良い職場は「思いやりのある職場」

誰かが一方的に意見を通すのではなく、会社のルールに則り、それぞれが相手の立場を配慮しながら、自分の意見を言える職場は、思いやりのある職場であり、成熟した職場であるとも言えるでしょう。人材は会社の財産です。職場環境を整えて、会社に定着するよう大切に育てていくことは、会社の業績向上にもつながります。皆で風通しいの良い職場づくりを意識していきましょう。