人材獲得競争が激しい現代は、優秀な人材の確保が企業の課題となっています。特にIT業界では、人材の採用や育成に時間やコストがかかるので、優秀な人材の流出は企業として見過ごせません。本記事では、優秀なIT人材が辞めることで企業やほかの従業員にどのような影響があるのか、また、離職を防ぐための環境づくりについてお伝えします。

なお、辞める理由や兆候を事前に把握する方法は「仕事を辞める人には何かしらの前兆があるのか?予兆の見つけ方と対策を紹介」で詳しく紹介しています。あわせてご参照ください。

優秀な人とはどのような人材か

優秀な人とは、能力が企業側の臨むレベル以上に到達している人のことを指します。IT業界での優秀なIT人材は下記の能力を備えています。

ITに関する知識が豊富である

優秀なIT人材はITに関する専門的知識が豊富です。プログラムの基礎知識はもちろん、最先端技術にも精通しています。IT分野は技術の発達が早く、常に最新技術が更新されています。優秀なIT人材は向上心を持ち続け、常に新しい技術や知識にもアンテナをはり、それらを身につけることに貪欲です。

困難に立ち向かうことができる強い精神力を持つ

業務遂行にあたっては、知識があるだけではなく、強い精神力も必要となります。仕事をしていると、技術的に困難な課題や、納期の厳しい案件などに出会うことが多くあります。このようなとき、重圧に耐えうる精神力を持ち合わせていない場合は、体調を崩して業務継続が不可能、といった事態に陥りかねません。優秀な人材は、どのような困難な場面でも常に解決策を模索し、投げ出すことなく立ち向かうことが可能です。

複数人をひとつにまとめる強いリーダーシップがある

優秀な人は自身が動くだけでなく、周囲の人間もうまく動かすことができます。IT業界では、チームを組成し複数人でひとつの案件を担当する機会も多いものです。チームで動く際、リーダーシップを持つ人間がいなければ各人がバラバラに動いてしまい、効率よく作業を進められません。優秀なIT人材は、一人ひとりの業務内容とチームのゴールを把握し、各メンバーに的確に指示を出して作業効率を高めることが可能です。ときには各メンバーの能力引き上げを行うこともできるでしょう。

社内外に対する交渉力や調整力に長けている

優秀なIT人材は高い交渉力と調整力を備えています。IT業界では、社内だけでなく、社外の客先やビジネスパートナーとのやりとりも多いでしょう。その際にも、優秀なIT人材は高い交渉力と調整力で実のある議論を交わすことができ、目的達成のための有益な協力関係を築くことができるでしょう。

優秀なIT人材が辞めることで企業におよぼされる影響

優秀なIT人材が辞めることで、実際に企業にはどのような影響があるのでしょうか。以下に見ていきましょう。

人材不足

優秀な人材が辞めることで、まず、影響として表れるのが人材の不足です。先に紹介したとおり、優秀なIT人材は知識や能力が高いので、1人で複数人分の業務量を処理することも可能です。そのため、優秀なIT人材1人を失うということは、複数の人材の離職と同等の意味を示すことがあり、その影響は大きいでしょう。

企業としての生産性減少

優秀なIT人材が辞めると、その分の生産性が減少します。優秀であるほど生産性は高いので、辞めることによる影響は大きくなります。また、業務が属人化していた場合、ほかの従業員では対応できないこともありえます。優秀な人材が辞めたことで、残された従業員の自社への不信感や不安が大きくなった結果、全体の生産性が下がる可能性もあります。

企業に対する評判の悪化

優秀なIT人材が辞めることで、企業に対する心象が悪くなる可能性があります。先にも述べたとおり、IT業界では、社外とのやりとりも多く、その際に優秀なIT人材は高い交渉力と調整力で大きな信頼を得ています。社外の人から見れば、これまでやりとりしていた相手が突然辞めてしまい、新しい担当者も対応が不十分であれば、今後の取引継続に不安を覚えるでしょう。企業の評判を悪くすることにもなりかねません。また、上述した生産性の減少も、企業の評判を落とす要因になります。

優秀なIT人材が辞めることで残った従業員におよぼされる影響

優秀なIT人材が辞めることによる影響は企業だけではなく、残された従業員にもおよびます。

担当する業務量の増加と疲弊

まず影響が出てくるのが、担当する業務量です。人材が減った分の仕事を残された従業員が処理しなくてはいけません。優秀なIT人材は任されている業務量が多いので、残された従業員は自身の仕事に加えて、相当量の業務に対応しなくてはならなくなります。また、マネージメントを担当していた優秀な人材が辞めてしまうと、現場を管理する人間が不在となる可能性もあります。適切に運営する人材がいない現場では混乱が生じ、生産性が低下するおそれもあります。そのような環境下では従業員が疲弊してしまい、メンタルヘルスへ悪影響がおよぶことも考えられるでしょう。

頼りになる相談相手がいなくなることによる不安

優秀な人材ほど、その豊富な知識や経験、リーダーシップにより周りから頼られることが多く、仕事の相談を受けることも多いものです。仕事中に不明点を相談し、頼りにしてきた人が辞めてしまうと、社内に相談する相手がいなくなってしまいます。わからないことを調べたり悩んだりする時間が増えて、業務の遂行が遅延する可能性も考えられます。

連鎖的に辞めてしまう

上記で紹介した状況から、残された従業員も働き続けることに不安を覚え、辞めることを考えるようになる可能性があります。優秀な人材が周りから頼られ、信頼される存在であればあるほど、ほかの従業員も「自分も一緒に」という気持ちになりやすいものです。また、優秀な人材が辞めるのは、企業側に原因があるのではと考え、自社への不信感を持つきっかけとなることもあります。

優秀なIT人材が辞めるという選択をさせないための環境とは

優秀なIT人材が辞めることが与える影響は、企業にとっても一緒に働く従業員にとっても大きいものです。したがって、辞めるという選択肢を与えない職場環境を整えるために、普段から企業としてしかるべき取り組みを行う必要があります。どのような環境づくりが必要かを紹介します。

適切な評価

優秀な人材が辞める企業の特徴のひとつとして、評価体制が整っていないことが挙げられます。優秀なIT人材にとって、所属する企業が自身にとって仕事をする価値がない場所であれば、より適した企業を社外に求めるでしょう。優秀な人材を辞めさせないためには、仕事をする価値があると思えるような評価体制の構築が必要です。

ところが、IT業界では技術変化が著しく、常に同じ基準で評価し続けることが難しい一面があります。技術変化に合わせて評価の見直しや表彰を行い、個々の技術に見合った評価ができるようにしなければいけません。また、上司が技術に明るくないことも多いため、上司による評価だけでなく、別のITエンジニアからの技術評価を受ける制度の策定も効果的です。そのためにはチーム内はもちろん、部署間のコミュニケーションも重要となります。

業務量の把握

優秀だからと業務を任せすぎることで、業務過多にならないよう注意が必要です。やりがいも必要ですが、心身の不調などを起こすようなことがあってはいけないので、全体のバランスを見て業務配分しなければいけません。一部の人材に業務が集中し、管理職など上の立場の人間は業務が少ないといった、それぞれの役割を果たしていない組織では、優秀な人材に限らず、従業員に見限られてしまいます。

また、業務が多忙で自身のスキルアップのために時間を費やせない場合も問題です。優秀なIT人材ほど、強い向上心を持っており、新しい知識や技術の習得に貪欲です。そのような人間からすれば、成長できない職場環境というのは望むところではありません。スキルアップのための時間を確保できるよう、業務を分散させるとよいでしょう。

IT企業では上司とプロジェクト責任者が異なる場合が多いため、スキルによる任命で業務が偏りやすく、業務量の可視化も困難です。ツールなどを利用して業務状況を可視化し、適切な業務量となるようにしましょう。

優秀な人材の意見を聞く

優秀な人材の意見を聞くことは非常に重要です。彼らは自分の仕事に誇りを持ち、プロジェクトの成功に貢献したいという意欲を持っています。そのため、彼らはプロジェクトの進め方や現場で発生している課題について敏感であり、独自の意見やアイデアを持っています。優秀な人材から率直な生の声を受け取り、その内容に基づいて適切な対策を実施し、結果を本人にフィードバックすることが必要です。これにより、彼らのやりがいが向上し、信頼関係の構築にもつながります。

このような優秀な人材の意見を収集するために、PJ Insightの活用がおすすめです。

PJ Insightは、毎週1回、プロジェクトメンバーに対して、プロジェクトの品質、納期、コストやコミュニケーションなどの項目について、5段階評価で回答するアンケートを実施します。その収集結果を時系列データにして、プロジェクトの状況や炎上の兆候を可視化します。

データから問題の兆候が見られた場合は、1on1などの個別面談を実施します。特に優秀な人材の意見を取り入れることで、彼らが持つ専門知識や経験を最大限に活かし、プロジェクトの状況を改善させることができます。

PJ Insightを通じて、優秀な人材が自身の意見が反映される環境を実感し、やりがいを感じることができます。また、彼らとのコミュニケーションを通じて、信頼関係が築かれ、チーム全体のパフォーマンスも向上することでしょう。

将来の明確なビジョンの共有

企業が持つ将来のビジョンや経営計画を共有することも重要です。将来的に企業がどこに向かうかのベクトルを合わせることで、自社内の結束が強くなり、一体感が生まれます。優秀な人材は、共有された情報から、自身の業務の成果がどのような結果を生むか、自分がどのような役割を担っているかを理解できます。企業から必要とされていると感じれば、仕事にやりがいを見出し、自社のために成果を出そうという思いを持つことにつながるでしょう。

人材の離職率低下に成功した事例紹介

実際に離職率低下に成功した企業はどのような施策を行ったのでしょうか。成功した事例を紹介します。

サイボウズ株式会社の選択型人事制度の導入

サイボウズ株式会社では、高い離職率に悩んでいました。離職率は2005年に過去最高の28%にまで上昇しましたが、下記の対策を講じた結果、5%以下に下げることに成功しました。

  • 組織や評価の体制の見直し
  • ワークライフバランスを考慮した制度
  • 社内コミュニケーションの活性化

特に、ワークライフバランスを考慮した制度の導入に関してはさまざまな施策を実行しました。そのひとつが、ワーク重視型かライフ重視型かで働き方を選べる選択型人事制度です。これは、時間と場所で働き方を9種類に分類し、そのなかから自身に合った働き方を選べる制度です。現在では、新しい制度である「働き方宣言制度」に移行しており、各従業員が自分の働き方を自由に記述することが可能になっています。育児や介護、通学、副業などのさまざまな個人の事情が尊重される風土となっています。

株式会社ビースタイルの社内コミュニケーションの見直し

株式会社ビースタイルでは、20%にまで上昇した離職率を3年間で8%に減少させることに成功しました。施策の実績として下記のようなものがあります。

  • 感謝の気持ちを表す「バリューズアワード」
  • 幹部に率直な意見を全員が伝える「全社日報」
  • マネージャークラスとのランダムな面談「1on1」
  • 午前・午後6時~9時には家にいようという「69ファミリーシフト」
  • 「新規事業プランコンテスト」

離職率が大きく高まった時期にもっとも欠けていたというコミュニケーションを見直し、360度全方位でのコミュニケーションが行えるように改善しました。役職にかかわらず、コミュニケーションを円滑に行えるようにしたことで、従業員のやる気やワークライフバランスに配慮した施策が能動的に活用され、離職率低下に成功しています。

株式会社ジオコードによる制度の社内募集

株式会社ジオコードは、社内制度を従業員から募集し採用することで、従業員の満足度の高い福利厚生をいくつも実現しました。同社は、福利厚生が充実している企業にこそ魅力があるという考えのもと、1年間に数回もの福利厚生の改善と導入を行っています。例えば、下記のような福利厚生があります。

  • サッカー休暇制度

ワールドカップとオリンピックの時期に発令される特別な休暇です。日本代表の試合がある日時やその結果に合わせ、当日または翌日が臨時休暇となります。さらに、予選を突破することで2日間の休暇も与えられます。そのほかにも、決勝トーナメント進出時には試合翌日が無条件で休暇となり、日本代表でなくても注目試合の日であれば午後出勤が許可されます。

  • エンドレスサマー制度

8月の夏季休暇のほかに、6月と7月に6日間の休暇が成績によって取得できます。従業員からはモチベーションが上がると好評です。

  • 社内FA制度

自身が希望する部署へ異動できる制度です。なかには営業担当からコンサルティング担当へと異動した実例もあります。人材が不足している部署のピンチヒッターとして活躍できる一面もあり、従業員だけでなく企業としてもメリットがある制度となっています。

従業員から募集したさまざまな福利厚生制度を制定したことにより、離職率が年々低下しており、社内のコミュニケーションも活性化しています。

優秀なIT人材が辞めない環境づくりが大切

優秀なIT人材が辞めてしまうと、単に人材が不足するだけでなく、企業としての生産性の減少や評判の悪化につながります。また、残された従業員にも悪影響を及ぼすことや、技術情報やナレッジの流出という可能性もあります。出産や親の介護、引っ越しといったライフスタイルの変化など離職を考えるタイミングはさまざまあります。離職をゼロにすることは難しいですが、企業として優秀なIT人材が辞める選択肢を選ばなくても良いような職場環境づくりをしていきましょう。そのため、優秀な人材の本音や、参画しているプロジェクトの現状を正しく把握することが重要です。

優秀な人材の本音や、参画しているプロジェクトの現状把握には、PJ Insightの活用がおすすめです。

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