「プロジェクト失敗」は、企業や組織が抱える深刻な課題の一つです。

計画通りに進めていたはずのプロジェクトが炎上し、納期遅延・予算オーバー・品質低下などの問題が発生すると、組織全体に大きな影響を及ぼします。

実際に、国内外の調査ではITプロジェクトの約70%が何らかの形で失敗しているというデータもあります。

本記事では、「プロジェクト失敗」の原因とその対策について詳しく解説し、失敗しないためのポイントを紹介します。

システム開発プロジェクト失敗の主な原因

ひとくちに「失敗」といっても、その種類や原因は多岐にわたります。

プロジェクトが失敗に至るには、計画の問題、人員の問題など、複雑な要因が絡み合っています。また、これらの要因が単独で問題を引き起こすこともあれば、複数の要因が連動してプロジェクト全体を危機に陥れることもあります。

この記事では、プロジェクト失敗のよくある原因を一つひとつ掘り下げ、対策と合わせて紹介していきます。

ITプロジェクト失敗の原因1:要件定義の甘さ

少し古い情報ではありますが2018年の「日経コンピュータ」の調査によると、「要件定義が不十分」そして「開発フェーズに入ってからの仕様変更」がITプロジェクト失敗理由として意見の多くを占めています。そしてその傾向は10年以上も変わることなく続いています。

要件定義の失敗が開発フェーズに入ってからの仕様変更の多発を引き起こすことを考慮すると、多くのプロジェクト失敗の原因は要件定義フェーズであることが明らかです。

プロジェクト失敗の理由、15年前から変わらず(日経ビジネス)より引用

要件定義の甘さが引き起こす失敗の典型例として次のものが挙げられます。

  • クライアントの要望が抽象的で、仕様が定まらない
  • ビジネス側と開発側の認識がズレたまま進行
  • 途中で仕様変更が頻発し、手戻りが発生

対策としては以下が考えられます。

  • 関係者(ステークホルダー)と綿密なヒアリングを行う
  • ワイヤーフレームやプロトタイプを活用し、視覚的にイメージを共有
  • 仕様変更が発生した場合のルールを明確にする(変更管理プロセスの確立)

しかし、多くのプロジェクトでは、上記のような取り組みを行っているはずです。要件定義の重要性はわかっていて、失敗しないよう注意をしていたとしてもなかなか十分に要件を詰めることができない。システム開発の要件定義というものがそもそも難しいものであるともいえます。

NCDCではUXデザインの手法を取り入れること要件定義フェーズでの齟齬をなくすようにしています。

委託元が要件を伝え、受託側がそれらをヒアリングした結果から、ワイヤーフレームや機能一覧、業務フロー図を書いて確認するというプロセスが一般的でしょう。このやり方の問題は「委託元も100%要件を理解していない。伝えられない」ということです。後述するアジャイル開発が一つの解決策ではありますが、内製プロジェクトではない場合、アジャイル開発の適用は難しいところがあります。そこでNCDCでは要件定義フェーズにおいて委託元の担当者もNCDCの担当者も一緒に「システム利用者」になりきって要件を可視化していきます。そのためにロールプレイや業務の理解などを一緒に進めていきます。その後、機能がある程度定義できたら画面のプロトタイプを作成し、実際のユーザーに使ってもらい検証します。ユーザテストという方法を採用しながら仕様に齟齬がないかを確認していきます。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。
資料公開|DX時代のシステム開発とは? UXデザイン先行型の要件定義手法を解説。 – NCDC株式会社

ITプロジェクト失敗の原因2:スケジュール管理のミス

2つ目はスケジュールやリソース確保といった計画時の原因です。

プロジェクトを計画する際に、スケジュールやリソースの見積もりが甘いと、想定外の問題が発生しやすくなります。

失敗の典型例としては

  • 「3ヶ月で完了する」と見積もったが、実際には6ヶ月必要だった
  • 必要なスキルを持つエンジニアが不足し、開発が遅延
  • 想定外のタスクが増え、プロジェクトがスケジュール通りに進まない

といったあたりでしょう。

改善策としては

  • 過去の類似プロジェクトのデータを活用して現実的な見積もりを行う
  • リスクを考慮して「バッファ期間」を設ける
  • 見積もり時には実際に担当予定のエンジニアやプログラマーも参画させる

などが必要でしょう。

また、受託のプロジェクトの場合、お客様の要求が短納期の場合も多いかと思います。しかし、モノづくりでは人数を増やしたとしても単純に期間が短くなるわけではないことを理解いただき、実現可能なスケジュールを計画する必要があります。多くの失敗プロジェクトでは「最初から無理だと思っていた」という現場の声を聞くことがあります。

現場の方をスケジュールの見積もりに参画させ、プロジェクト期間中も現場の声をシームレスにプロジェクトで可視化するなども重要な試みでしょう。

NCDCでは現場の声をプロジェクトに反映させるプロジェクトマネジメントツールを提供しています。NCDCの関わる全てのプロジェクトで使用しており、失敗プロジェクトの減少に一役買っています。

ITプロジェクト失敗の原因3:コミュニケーション不足

クライアントとの認識のズレやチーム内でのコミュニケーション不足もよくある問題です。

プロジェクトチーム内やクライアントとの情報共有が不足すると、認識のズレや誤解が発生し、結果的にプロジェクトが失敗へと向かいます。

  • 仕様変更の伝達が遅れ、開発が無駄になる
  • チームメンバー間の役割が不明確で、作業が重複または抜け漏れ
  • プロジェクトの進捗状況が共有されず、課題が発覚するのが遅れる

改善策としては

  • 定例ミーティングを設定し、進捗や課題を可視化
  • タスク管理ツール(JIRA、Trello、Redmineなど)を活用
  • クライアントとも定期的に情報共有を行い、仕様のズレを防ぐ
  • 現場からステークホルダーまでシームレスな情報共有ができるツール「PJ Insight」を活用して、「情報が足りない」「この仕様で本当に正しいのか?」などの現場が感じている不安をPMが迅速に掬い上げる

などが挙げられます。

ITプロジェクト失敗の原因4:技術的課題

技術的課題や品質の問題も失敗の原因になります。開発中に技術的な課題が発生し、それを解決できないと、プロジェクト全体が大きく遅延します。

失敗の典型例として、

  • 未経験の技術を採用し、開発チームが対応できなくなる
  • 設計が不十分で、後からシステムの拡張性に問題が発覚
  • テストが不十分で、リリース後に大量のバグが発生する

が挙げられます。

  • 開発前に技術選定と技術検証を行っておく
  • アジャイル開発を導入し、小規模なリリースを繰り返して品質を向上
  • コードレビューを定期的に実施し、技術的な問題を早期に発見

ITプロジェクト失敗の原因5:リスク管理の欠如

最後にご紹介するのは、リスク管理の欠如です。

どんなプロジェクトにもリスクはつきものですが、事前に対策を講じていないと、問題が発生したときに対応が遅れ、プロジェクトが失敗してしまいます。

失敗の典型例としては以下があります。

  • プロジェクト中に主要メンバーが退職し、進行がストップ
  • 突発的な仕様変更に対応できず、納期が大幅に遅延

対策としては

  • プロジェクト開始前にリスク分析を行い、リスク管理計画を策定
  • 想定されるリスクごとに対策を事前に準備
  • プロジェクトマネージャーが、メンバーが気づいた潜在的なプロジェクトの問題点を早期に発見できるツール「PJ Insight」を活用しながらリスクを常に監視し、早期対応できる体制を整える。

失敗しないためのプロジェクト管理手法

「プロジェクト失敗」を防ぐためには、以下のようなプロジェクト管理手法を導入することが重要です。

アジャイル開発の導入

従来のウォーターフォール型開発では、途中の仕様変更に対応しづらいという課題があります。

アジャイル開発を導入することで、小規模なリリースを繰り返しながら、柔軟に対応できるようになります。ただし、受託開発では適用しにくい面があります。

WBS(Work Breakdown Structure)の活用

プロジェクトのタスクを細分化し、**「いつまでに、誰が、何をするか」**を明確にすることで、スケジュールの遅延を防ぐことができます。

KPI(重要業績評価指標)の設定

  • 進捗率
  • コスト消化率
  • 品質評価(バグの発生率)

これらの指標を定期的にチェックし、問題があれば早めに軌道修正を行うことが重要です。

まとめ

「プロジェクト失敗」の原因は、要件定義の甘さ、スケジュール管理のミス、コミュニケーション不足、技術的課題、リスク管理の欠如など多岐にわたります。しかし、適切なプロジェクト管理手法を導入することで、失敗のリスクを最小限に抑えることが可能です。

特に、アジャイル開発の導入、タスク管理ツールの活用、定期的なリスク分析を行うことで、プロジェクトの成功率を大幅に向上させることができます。

企業がプロジェクトを円滑に進め、成功に導くためには、失敗事例を学び、適切な改善策を講じることが不可欠です。

本記事を参考に、プロジェクトマネジメントの精度を高め、より成功率の高いプロジェクト運営を実現しましょう!