チームのパフォーマンスの充分な発揮には、適切なチームマネジメントが欠かせません。そのためには目標設定や作業環境など、さまざまな要素を整える必要があります。
本記事では、とくにITエンジニアのチームマネジメントにおいて重要なポイントや円滑なチーム運営のヒントをお伝えします。
チームマネジメントとは
チームマネジメントとは「組織のリーダーが、チーム体制の整備、業務の仕組みづくり、個々のメンバーへの働きかけを行うことでチーム目標の達成を導く諸施策」を指します。
チームマネジメントそのものは、どの業界・職種においても欠かせない要素ですが、ITエンジニア組織の場合、一般的なマネジメントスキルに加えて、プロジェクトに参画するメンバーの選出や開発・運用のコントロールなどもマネジメントの対象に含まれることがあり、幅広い知見が求められます。
チームマネジメントが重視される背景
働き方改革への取り組みや新型コロナウイルス感染症対策などにより、働く場所や時間の多様化が一気に進みました。そのような状況で生産性を上げるには、チームメンバーが各自の勤務時間や勤務場所、環境で、十分にスキルを発揮できる土壌を作る必要があります。
また、チーム内に年齢・性別、国籍などが異なるメンバーが在籍していたり子育てや介護などで勤務可能時間や形態に制限のあるメンバーがいたりすることも少なくなくありません。そのような状況下でもメンバー同士が十分にコミュニケーションを取り、それぞれの立場を理解しながら安心して業務に取り組めるような雰囲気作りも重要です。
チームマネジメントを行うにあたっての課題
チームマネジメントを行う上での主な課題を3つ紹介します。
業務負荷の適切な割り振り
業務の処理能力が高い人や管理職ばかりで仕事を進めてしまい、他のメンバーに仕事が割り振られていない状況では、チーム全体としての成長が望めません。そこまで極端でなくとも、仕事量が明らかに多い人と少ない人に別れてしまうと、お互いの不公平感につながってしまいます。メンバーを信頼し、適切に業務を割り振ることが重要です。
モチベーションの維持
メンバーのモチベーションは、チームの成果に大きく影響します。そのため、チームマネジメントでは、メンバーのモチベーション維持・向上が大きな課題となります。モチベーションの誘因は人によって異なりますが、仕事の適切な割り振りや快適な人間関係、心理的安全性は、ほとんどの人においてモチベーションに大きく影響してきます。
コミュニケーションの維持・活性化
メンバー同士の十分なコミュニケーション維持・活性化はチームマネジメントの基本となる課題です。特に現代のように働き方、人材の多様化が進んだ時代には、時代にフィットした工夫が求められます。
ITエンジニアチームマネジメントの重点とは?
「マネジメント」と一口にいっても、そこには組織全体での目標やメンバー間のコミュニケーション体制の構築などさまざまな要素が含まれます。ITエンジニアチームマネジメントにおいて特に重要なポイントを見ていきましょう。
目標設定と進捗管理
マネージャーにとって重要な業務にはまず、目標設定と進捗管理があります。目標には組織全体あるいはチーム内で到達すべき目標と、メンバー個々人に課される目標があります。マネージャーの仕事は、前者の目標を自身の管理するチームに周知し、到達に向けて後者の目標を設定、その後の進捗管理を適宜行っていくこととなります。
ITエンジニアに適した目標設定と進捗管理の方法として、OKR(Objectives and Key Results)があります。これはインテルやGoogleなど、さまざまなIT企業で採用されている目標管理手法です。組織全体の「達成目標」と「主要な成果」を決め、組織全体の「達成目標」にリンクするように、各チームやそれを構成する個人それぞれの「達成目標」と「主要な成果」を設定し、目標達成に向けての取り組みを進めていきます。
目標管理の手法としては、他にKPI(Key Performance Indicator)管理がありますが、KPIでは実現可能な数値を設定し、100%達成を目指すのに対し、OKRでは組織全体の「目標」は高く設定し、「主要な成果」で求められる成果は60〜70%ほどとなります。また、目標を設定するだけではなく、目標を達成するまでのプロセスを明確にし、チーム全体に共有することが重要です。
道筋が不明瞭のまま一方的に目標だけを課すと、メンバーのモチベーションの低下につながるリスクや、伝達事項の行き違いによってトラブルが引き起こされるなどの懸念があります。目標達成までの進め方を共有し、定期的に進捗状況を共有することで、業務を円滑に進めることが可能となります。
日々の進捗管理においては、一般的に報告が漏れなく上がってくる仕組みを構築することが重要となってきます。これはマイナスの報告も即時に受け取り、トラブルを早期に把握、軌道修正できる組織づくりを進めるという意味合いでも重視したい点です。しかし、現場の実情としては、こまめな進捗報告を嫌がるITエンジニアもいます。日々の進捗についてはGithub上でコードの進捗を確認。それだけでは把握できない事項について定期的なミーティングなどでヒアリングするなど、プロジェクトメンバーのスタイルに合わせた運用方法を取る必要があります。そのため、仕組みをつくるだけではなく、普段から各メンバーとのコミュニケーションを円滑にし、組織全体の心理的安全性を醸成することも意識したいものです。
「心理的安全性」については、「心理的安全性とは何か?組織のパフォーマンス向上の鍵」をご参照ください。
タスク管理ツールのような従来の進捗報告手法以外では、PJ Insightのようなツールを活用することもお勧めです。PJ Insightは、プロジェクトの本質を見抜く(insight)ためのツールで、従来の進捗報告手法では把握できなかった品質や納期などに対するメンバーの本音・不安をオンラインの定期アンケートで収集し、時系列データとしてプロジェクトの状況を可視化します。
開発に集中できる環境の整備
プロジェクト進捗を左右する重要な要素のひとつが「開発環境」。デプロイの自動化など、コーディング以外の作業を効率化するなど、プロジェクトの早い段階で、メンバー個々人が開発に集中できる環境を整えることが重要となります。環境の整備自体は必要ですが、必ずしも自動化が最適解なわけではなく、コストの兼ね合いなどで実施しないということもあります。そのため、プロジェクト全体の時間・費用面でのコストを検討し、どの程度の環境整備を実施するかの判断をします。
業務の品質管理
メンバーそれぞれのスキルや経験を活かしてこそのチームワークではありますが、業務のレベルにバラつきがあると、パフォーマンス以前にチームとしての運営に支障が生じてしまいます。新規案件や、チームが立ち上がって間もない時期の場合は、マニュアルの作成や運用などで、誰が実施しても同じレベルのものが出来上がるよう、品質を均一化させることが重要です。
例えば、先述のOKRを実施する過程で、チームやメンバー単位での「主要な成果」に業務の品質について定義づけたものを組み込む方法が考えられます。一定以上の品質が保たれるようになったうえに、メンバーそれぞれの持つスキルを発揮し、パフォーマンスをさらに高めていくことが可能となります。
問題点の早期把握と解決
どのようなプロジェクトにも、何かしらのトラブルや調整はつきものです。常にチームの状況や懸念点を早期に把握し、的確な判断をくだす必要があります。そのためにはチームメンバーだけではなく、チームマネージャーの統括者やクライアントと調整するための交渉力が求められる場面もあります。
メンバーそれぞれに応じたフィードバックとコミュニケーション
チームマネジメントにあたっては、プロジェクトメンバーそれぞれの持つ特性を活かすように仕事を采配する必要があります。例えば、「見落としやすいバグを発見するのが得意な人」にテストを、「コード品質が高い人」に複雑なものを割り振るなど、各メンバーの得意分野を活かしつつチーム全体のパフォーマンスの向上を図ります。
また、各メンバーが「プロジェクトを通して得たい」「プロジェクトのなかでやってみたい」と考えているものを把握し、実現できるように調整することも、人材育成やモチベーション管理の観点から欠かせません。
マネジメントにおいて、多くのリーダーにとって悩みの種となるのがチームメンバーとのコミュニケーションです。仕事の任せ方や指導の仕方で躓きがちなところでもあり、組織全体のパフォーマンスや安定性にも影響しかねない、重要なポイントでもあります。
業務そのものの進捗については、定期的なフィードバックを実施、メンバーそれぞれが抱える課題や改善に向けての取り組みを共有し、チーム全体が把握できる形で実施します。
フィードバックの具体的な方法としては、フレームワークを用いてプロジェクト内の個々の業務を振り返る「KPT」や、チームリーダーと各メンバーが一対一で定期的なミーティングを実施し、業務の振り返りや個々が抱えている悩みのヒアリングを実施する「1on1」などがあります。これらは、組織のパフォーマンス向上を目的とした「チームビルディング」の一環としても取り入れられています。これらの手法を取り入れつつ、適切なチーム管理や指導を実施することで、プロジェクトを円滑に進めることができる組織体制が構築できるでしょう。
コミュニケーションの際には、ミーティングやフィードバックそのものの手法だけではなく、自身のコミュニケーション姿勢においても、いくつかの留意点があります。相手のペースに合わせた会話をする「ペーシング」、ジェスチャーなどの「ノンバーバルコミュニケーション」、相手の考えを尊重して受け止める「アクノレッジメント」など、非言語的な要素も重視しましょう。
部下の持っている能力や可能性を引き出し、チームのパフォーマンスを高めるためにも、普段から部下とのコミュニケーションを心がけておくことが大切です。
社内コミュニケーションについては「風通しの良い職場とは?特徴と取り組みをメリットと注意点を交えて解説」を、さらに、組織づくりについては「強い組織とは?組織作りに欠かせない基本原則や有効な施策を紹介」も併せてご参照ください。
テレワークにおけるチームマネジメント促進のポイント
ここまでマネジメントにおけるポイントをいくつか挙げましたが、ITエンジニアのチームの場合は、メンバーそれぞれが物理的に離れて動いていることも多いため、テレワークにも対応した方法を検討する必要があります。また、報告にとどめるだけではなく、チーム全体での情報共有など、コミュニケーション内容の質を高めることにも併せて留意したいものです。
チャットツールやTV会議での定期的なコミュニケーション
チーム内でのコミュニケーションを促進する場合、定期的にミーティングや面接を実施するとよいでしょう。例えば、週1〜2回程度、チーム内での業務報告としてTV会議を設定し、併せてそれぞれの業務で得た経験・情報の共有や、現状の組織における懸念点・改善点の共有をするなどの方法が考えられます。
また、フィードバックについても、個別で月1回か、業務の区切りにかぶせて実施できると、個々人の課題点や進捗を把握しやすいでしょう。
画面を共有した状態でのコワーク
職務スペースを共有しながら、それぞれが異なる業務を進める「コワーキング」という働き方があります。作業能率の向上だけではなく、同じ場所で作業をしている他の人とのコミュニケーションを通し、経験や知識を情報共有できる点から、モチベーションの向上が期待されています。この「コワーキング」をリモートで実施するようなイメージで、画面を共有しながらチームでの作業を進めていく方法もあります。同じ画面を見ながらなので効率的にディスカッションや情報共有を図ることができ、同時に作業を進めることで同じ場所に集まって作業する場合と同等の効果が期待できます。
「個別の連絡はチャットで」「チームでのミーティングやディスカッションはWeb通話で」と、ツールを使い分けつつ、チーム内でのコミュニケーションの促進と、作業の効率化を同時に実現することが可能です。
ポイントを抑えて円滑なチーム運営を
チームマネジメントとひと口に言っても、気を配らねばならない点は多岐にわたります。特にコミュニケーションは人が介在するだけあって、なかなかうまくいかないことも多いでしょう。しかし、ポイントを押さえてこまめに対策や工夫を行うことで、スムーズに運営することが可能です。
そのためのツールとしておすすめなのが「PJ Insight」です。

PJ Insightは、毎週1回、チームのメンバーに対して、プロジェクトの品質、納期、コストやコミュニケーションなどの項目について、5段階評価で回答するアンケートを実施します。その収集結果を時系列データにして、プロジェクトの状況や炎上の兆候を可視化します。
もしPJ Insightでチームマネジメントがうまくいっていない可能性を見つけたら、1on1などで不満を感じているメンバーからヒアリングを行い早期にアクションを起こすことができます。
また、PMOはプロジェクトマネージャーの報告だけでなく、現場のリアルな声も把握することができ、適切な支援を行うことが可能です。 PJ Insightは、アンケート、プロジェクトの現状把握、炎上リスクの早期解決のサイクルを繰り返し、プロジェクトの状況を継続的に改善する、プロジェクトのヘルスチェックツールです。
30日間の無料トライアルをご用意していますので、ぜひこの機会にPJ Insightの導入をご検討ください。