プロジェクトを成功に導くためには強いチームを構築し、パフォーマンスを向上していく必要があります。チームの土台は、全体で共有される理念や体制、メンバーそれぞれのマインドなどさまざまな要素で構成されているため、多角的な取り組みが重要となってきます。 

本記事では、チームビルディングのポイントや取り組むべき施策について見ていきましょう。 

チームとは~チームの強弱を左右する要素とは? 

チームとは「個々のものが何らかの秩序をもって全体を構成すること」(三省堂 新明解国語辞典 第七版より)と定義されています。さまざまな人が集まった状態を「集団」と言いますが、そのなかで目的や期限があるチームがプロジェクトと言えるでしょう。

プロジェクトのなかにも強いプロジェクトと弱いプロジェクトがあり、これはプロジェクト全体としての一体感や、プロジェクトを構成するメンバー個々人の当事者意識やチームワークといった要素に左右されます。

チームビルディングによって得られる成果 

チームビルディングに取り組むことで得られる成果としてまず挙げられるのは、チームのメンバーが自律して行動する環境が生まれるということでしょう。PMからの指示がなくとも自ら考え自走できるようになるため、チーム内に好循環が生まれます。 

ここからは、チームビルディングで得られる具体的な成果の例として3つ紹介します。 

生産性の向上 

チームが活性化し、メンバー全員が同じ目標に向かって動いている「強いチーム」では、メンバーは目標達成のために何をすべきかを主体的に考えて行動します。そのため、PMからの指示待ちで受け身なメンバーばかりのチームと異なり、メンバー一人ひとりが能力を存分に発揮できるようになることで、生産性の向上が期待できるようになります。また、メンバーそれぞれがプロジェクトに関するアイデアや改善提案を出し合う雰囲気が生まれるため、QCDの向上につながることもあり得ます。 

心理的安全性の向上 

チームに属するメンバーのコミュニケーションが円滑で信頼関係が構築できていると、メンバーはお互いを尊敬し、問題があれば進んで助け合うことができます。メンバーの自発性・積極性が引き出されることでチームに活気が出ることで、メンバーはチームに居心地の良さを感じ、相互理解や相互承認を深めることができます。このようにして、チーム内における心理的安全性が向上した状態では、質問やアイデアなどを安心して発信できるため、結果的に生産性が向上することになります。Googleの「生産性の高いチームは心理的安全性が高い」という研究結果も話題になりました。 

顧客満足度の向上 

チームビルディングに成功するとメンバー一人ひとりが自分の仕事に誇りを持ち、自主的により良い働きをしようと努力します。また、チームが明るく活発な雰囲気であればネガティブな感情は起こりにくく、各々が持てる能力を最大限に発揮することができるようになるでしょう。様々なバックボーンを持つメンバーが能力を発揮することで問題解決へのアプローチが多角的になり、効率的に解決策を見出すことができるようになると、クライアントの期待を上回るような成果を生むことが予想できます。つまり、顧顧客満足度の向上に繋がりやすくなるのです。 

チームビルディングにおける5段階のプロセス「タックマンモデル」 

ここで、心理学者のブルース・W・タックマンが提唱した「タックマンモデル」に触れておきましょう。これは、チームビルディングにおけるチームの発展を5段階に分類したものです。以下のようなモデルを通じて、チームは自然に成熟し、最終的には効率的に機能するということが示されています。 

  1. 形成期 

チームメンバーが集まり、自己紹介や役割分担が行われる段階です。メンバー同士がまだ手探りで、緊張感がある場合もあります。 

  1. 混乱期 

 意見の対立や役割の不満が出やすい段階です。リーダーシップや目的に対する意識の違いが浮き彫りになり、衝突が発生しやすくなります。 

  1. 統一期 

メンバー間の役割が確立し、チームとしてのルールや協力の体制が整い始めます。コミュニケーションも円滑になり、信頼関係が深まります。 

  1. 遂行期 

チームが効率的に協力し、目標達成に向けて成果を上げる段階です。この時期には、メンバーが自律的に動くことができ、リーダーシップも分散されています。 

  1. 散会期 

プロジェクトの終了やチームの解散に向かう段階です。成功を祝ったり、チームの成果を評価したりして解散準備を進めます。 

統一期において、メンバー間の役割が確立することでチームとしての機能が強固になっていくことが示唆されています。強いチームには、メンバー個々人の役割意識とメンバー間の結束が欠かせません。

強いチームに共通する条件

ここからは、強いチームに共通する条件を見ていきましょう。 

チームの価値観や目的を共有できている 

チームにはそれぞれの価値観があります。この価値観を、チームの持つ目的とともに、チーム成員の末端まで共有できているということが重要です。それぞれ担う役割の異なるメンバー一人ひとりがこれを理解し、個々人の役割を果たしていけるかといった視点で見直しましょう。 

チームの課題をメンバー個々人の「自分ごと」に落とし込めている 

チームを構成する個々人がそれぞれの役割を果たすためには、チームの課題を「自分ごと」として捉え、向き合うことができるかという点も重要です。メンバーそれぞれが各課題に対して自分が果たすべき役割を見出し、連携し合うことで、チームとしての働きが強固となっていきます。そのためには、単に「PMから通達された目標」という捉え方に終始するのではなく、目標を個人のタスク単位まで落とし込んで取り組むようにする必要があります。 

妥当な「権限委譲」ができている 

チームを強固にするためには、メンバーが主体的に役割を果たせる状態に育成することが必要です。日々の業務にPMやメンターによる指導を行いながら、任せる範囲や裁量を少しずつ広げていくことで、チームを支える人材となります。こうした妥当な「権限委譲」を実現することで、個々の人材も、チームとしてのまとまりも強化されていくでしょう。 

プロセスも評価基準に取り入れている 

個人のがんばりを適切に評価する「成果主義」はチームメンバーのモチベーション維持・向上に効果的な評価方法です。一方で行き過ぎた成果主義ではチームがギスギスした雰囲気になり、チーム本来のパフォーマンスが発揮できません。「結果がすべて」と自分の担当業務だけに固執し、チーム内のメンバーをライバル視したり、足を引っ張ったりと助け合いの意識が薄まります。 

メンバー同士のつながりを活性化し、チームワークを発揮できるようにするためには、結果につながるまでのプロセスも評価基準に組み入れることが重要です。評価基準を明確にし、メンバーが気持ち良く働けるような環境・ルール作りに取り組みましょう。 

適切な人材育成が行われている 

強いチームを作るためには個人の成長が欠かせません。スキルアップによってチーム全体の生産性向上が期待できるだけでなく、メンバーの自己実現によるモチベーションの向上や満足度・チームへの愛着・帰属意識などの向上にもつながります。 

人材育成を考える際は、スキルアップの道筋を可視化していくこと、メンバー自身に目標や課題を見つけさせることが重要です。人材育成の意義を正しく理解させ、意欲的にスキルアップに臨めるような環境作りをすることや、「やらされている感」を払拭し当事者意識を持たせることを意識しましょう。 

強いチームづくりに有効な施策とは? 

では、具体的にどのような施策を展開すればよいのでしょうか。 

ポジティブなコミュニケーションの促進 

適切に権限委譲を成功させるためには、権限委譲後のコミュニケーションを円滑に取れるようにしておくことが重要です。チーム内でスムーズに連携が取れるように、ふだんからプラスのコミュニケーションを促進しましょう。 

プラスのコミュニケーションのための施策としては、「メンバー同士の交流機会の提供」や「お互いに認め合い、モチベーションの維持向上につなげられる風土づくり」が挙げられます。 

「メンバー同士の交流機会の提供」の事例には、ITツールの活用や1on1の実施などがあります。なかには、会社の補助によってランチミーティングを推奨しているケースも。強制力を持たせず、あくまでも「自発的にコミュニケーションが促進される場」を構築していくことが重要となります。 

また、業務のなかでのコミュニケーションにも留意する必要があります。これには、「お互いに認め合い、モチベーションの維持向上につなげられる風土づくり」を促進することが有効です。そのためのポジティブなコミュニケーションとして「業務のなかで褒めあう」ことが挙げられます。昨今では「褒めて伸ばす」というキーワードを見かけますが、メンバーを褒めることによってメンバーのモチベーションを上げるだけではなく、チーム全体の運営や褒める側の業務遂行上にもさまざまなメリットがあります。 

チームの価値観を共有し、「自分がこのチームで働く意義」を実感させる 

チーム全体のコミュニケーションだけではなく、チームに属している個々人の意識づけも欠かせません。 

チームには、さまざまな性質や属性の人が集まっています。その性質上、一方的にひとつの価値観を押し付ける方法では、個々が帰属意識を持ちつつ「自分自身がこのチームに属している意義」を見出すことは難しいものです。まずはチーム全体の進むべき方向性を、メンバー個々人が「自分ごと」として捉えられるように共有できることが重要となります。 

このために、チームの価値観を「自分がこのチームで役割を果たす意義」に落とし込める機会づくりが求められます。 

メンバー自らが思考し、スムーズに意思決定ができる環境を作る 

チーム内だけではなく社内各部署の機能においても、組織の上層部から一方的に伝達されるのではなく、メンバー個々人が自発的に思考し、取り組むように促すことが欠かせません。そのためにはまず、現状の業務フローの見直しと、チーム内での意思決定をスムーズに行うことが可能な体制構築が必要です。そして、PMは各メンバーの役割に応じて権限と責任を持たせるようにします。それと同時にメンバーを指導育成し、権限委譲が促進される環境を整えましょう。また、取り組みがうまくいかなかった場合にフォローができる体制も考慮する必要があります。 

一人ひとりが参画できるチームビルディングを進めよう 

チームビルディングと言うと、どこから手を付ければよいか迷ってしまうこともあるかと思いますが、メンバー一人ひとりが負担に感じることなく参画できる小さな取り組みもあります。 

PMとメンバーの関係性をよりよいものにしていくツール「PJ Insight」は、チームのメンバーに対して毎週1回のアンケートを実施することで、メンバーの心境を可視化します。プロジェクトの品質、納期、コストやコミュニケーションなどの項目について5段階評価で回答する際に、一言添える形で気軽に提案ができるようになっています。プロジェクトのためになる話題を率直に共有し合う環境としても活用いただけます。 

30日間の無料トライアルをご用意していますので、ぜひこの機会にチームビルディングにも役立つPJ Insightの導入をご検討ください。