プロジェクトや業務を円滑に進めるためには、工数管理が不可欠です。とくに予算や期間が決まったプロジェクトにおいて、工数管理はプロジェクトの成否に大きく影響する重要な要素です。
この記事では、工数管理の重要性や正確に管理するためのポイントを解説します。
工数管理とは
工数とは、ある作業を完了させるために必要な作業量のことを指します。主に以下の3つの単位で表現されます。
- 人時:ひとりが1時間で完了できる作業量
- 人日:ひとりが1日で完了できる作業量
- 人月:ひとりが1か月で完了できる作業量
たとえば、あるタスクの実行にかかる作業量を「6人日」と見積もった場合、作業者がひとりであれば6日かかりますが、作業者がふたりであれば3日でできるという風に考えられます。
もし実際には作業者がふたりで5日かかってしまった場合、「6人日」の工数見積もりに対して「10人日」の工数実績となるので予定をオーバーしたことがわかります。
工数管理とは、プロジェクトの計画段階から終了まで、正確な工数を随時収集して管理することです。具体的には、作業時間の記録や報告、進捗状況の把握、作業量の見積もりと実績の比較などが挙げられます。
工数管理の重要性
工数管理により、プロジェクトの遅れや予算超過などを早期に発見し、適切な対策を講じることが可能となります。
人的資源の配分を適切に行い、スケジュールを順守する
プロジェクトにおける全体の責任者であるプロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体の計画段階で工数見積もりを行い、各タスクの担当者や作業期間を決定します。現在の人的資源、スキルセット、予算、納期などの制約条件を考慮しながら、効率的かつ適切な人材配置を行うために、工数管理は欠かせません。
また、正しく工数管理を行うことで、作業期間や進捗状況の把握が容易となり、タスクごとの完了予定日やスケジュールの変更など、必要に応じて調整が可能になります。
問題発生時に問題点を特定する
プロジェクトにおいては、問題が生じた際に早急に問題点を特定し、迅速で適切な対策を講じることはとても重要です。
工数管理を行うことで、各タスクの進捗状況や、作業期間などが把握できるため、問題が発生した場合に、どこで何が原因となっているかを特定することが容易となります。また、進捗が遅れているタスクや予定よりも工数が多くかかっているタスクなどを把握し、原因を分析することもできるでしょう。
問題点を把握できれば、対策を講じるだけではなく、類似の問題を未然に防ぐための予防策を講じることもできます。
反対に、工数管理をしっかり行わないとスケジュール遅延や予算超過のリスクが増大してしまいますし、特定の人に負荷が偏ってプロジェクトメンバー同士の関係に悪影響を及ぼすこともあります。
工数管理のメリットとデメリット
次に工数管理を行うことのメリット、デメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット
工数管理の重要性の項でも触れましたが、工数管理を行うことで多くのメリットが得られます。
無駄の削減によるプロジェクト遅延の防止
工数管理により各タスクに必要な労力を把握することができれば、優先順位を決めて適切なリソースを割り当てることができます。無駄な作業を削減することにもつながるでしょう。これにより、プロジェクト全体の進行がスムーズになり、遅延を防止することができます。
予算把握、納期管理
タスクに必要な労力を正確に把握することで、予算の的確な管理が可能となります。また、タスク完了までに必要な時間を正確に把握することで、納期管理も正確に行うことができます。つまり、プロジェクトの予算超過や納期遅延を防ぎ、ステークホルダーに対して正確な情報を提供しつつ、信頼性の高いプロジェクト運営につなげることができます。
進捗率の可視化
工数管理により各タスクの進捗状況を正確に把握することができれば、プロジェクト全体の進捗状況を把握することもできます。プロジェクトメンバー間で共通の現状認識が生まれることにより、メンバーの間での良いコミュニケーションも促進することができるでしょう。また、進捗状況を可視化することで、問題点を早期に発見することもできます。
計画・見積もりの精度向上
工数管理をすることで、計画・見積もりの精度が向上し、プロジェクトのスケジュールや予算をより正確に管理することができるようになるでしょう。
メンバーの生産性アップやモチベーション向上
正確な工数管理により各タスクに必要十分な労力を把握し、無駄な作業を削減することができると、プロジェクト全体を効率的に進めることができます。チームメンバーのコスト意識向上にもつなげることが可能でしょう。さらに、無駄なくプロジェクトが円滑に進んでいる状況が明確になれば、目標達成に向けたメンバーの意欲の高まりも期待できます。
データとナレッジの蓄積・活用
工数管理を行うことでプロジェクトに関するデータやナレッジを蓄積し、その活用を図ることができます。
過去のプロジェクトにおけるそれぞれのタスクに必要であった労力や進捗状況などのデータを集積していくと、同じようなプロジェクトを請け負う際に、これまでのデータを分析し、成功の鍵を探ることができるでしょう。例えば、過去の成功事例や失敗事例を分析し、新しいプロジェクトに取り入れることで、問題の発生を未然に防ぐことができるでしょう。さらに、データとナレッジの蓄積を通じて、従業員が自分のスキルや業務の改善点を把握しやすくなることも大きなポイントです。これにより、個々のメンバーのスキルアップやチーム全体の生産性の向上につながることが期待できます。
PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルに貢献できる
工数管理を導入することによって、PDCAサイクルに貢献することができます。具体的には次のとおりです。
- Plan(計画):工数管理によって、プロジェクトの工数やコストを事前に見積もり、リソースの適切な配分やスケジュールの設定が可能になります。
- Do(実行):プロジェクトが進行するなかで、工数管理を行いつつ、計画どおりにリソースが活用されているかを確認し、適宜調整ができます。
- Check(評価):工数管理を通じて、進捗状況やコストが計画に沿っているかどうかを検証し、問題があれば原因を特定します。
- Act(改善):問題や課題が発見された場合、それらに対処するための改善策を立案し、実行に移すことができます。
このように、工数管理の導入によって、プロジェクトの計画・実行・評価・改善が効率的に行われるため、プロジェクト全体のパフォーマンスが向上します。また、PDCAサイクルが円滑に回ることで、企業全体の生産性も向上することが期待できます。
デメリット
工数管理にはメリットだけではなく、デメリットや留意点もありますので注意が必要です。ここでは3つの留意点について説明しましょう。
管理に時間がかかる
タスクごとに正確な工数を把握するには多くの時間がかかり、また、工数管理のための書類作成や進捗報告などの手間もかかります。特に、細かい作業が多い場合には、工数管理に費やす時間が多くなることがあるので、工数管理を行う際には、実施に必要な時間やリソースを適切に見積もる必要があります。
管理ツールのコスト
工数管理に専用のツールを導入する場合には、ライセンス料、導入費用、維持費用など、さまざまなコストがかかります。また、導入の際にはメンバーのトレーニングや技術サポートが必要となるでしょう。したがって、ツール導入の際には、事前にツール導入のメリットとコストを、十分に検討することが重要です。ツールがもたらす効率化や生産性向上といったメリットと、導入・維持に伴うコストやリスクを比較検討し、ツール導入の必要性を判断しましょう。
学習コスト
工数管理には、正確な測定や報告方法など専門的なスキルや知識が必要となる場合があります。工数管理に関するトレーニングを行うことで、従業員は正確な報告方法や工数管理ツールの使い方を学ぶことができますが、このトレーニングにはコストがかかり、また、従業員には時間を割かせる必要があります。
また、学習コストには、習得だけではなく熟練するまでの時間も含まれます。従業員が慣れるまでには時間がかかるため、導入の初期段階では従業員が工数管理のために費やす時間や労力が増えてしまい、かえってプロジェクトの進行にマイナスの影響を生む可能性もあります。
工数管理のポイント
工数管理を行うにあたって注意しなければならない主なポイントを以下に紹介します。ポイントを踏まえることで、プロジェクトの成功に向けたリスク管理やプロジェクトの進行管理がより効率的になり、プロジェクトの成功確率を高めることができるでしょう。
タスクを明確に定義し、工数測定対象を具体化する
タスクの明確な定義は、工数管理において非常に重要なポイントです。具体的には、タスクの範囲や内容、目的、成果物などを明確に定義し、各タスクの工数測定対象を具体化することが必要です。また、タスクを細かく分解して、各作業の工数を細かく測定することも重要です。これにより、詳細まで正確に把握することができます。
作業量の定期的な報告を受けて進捗状況を把握する
各メンバーに担当するタスクの作業量を定期的に報告してもらうことで、進捗状況を把握することが重要です。報告の頻度や方法はプロジェクトによって異なりますが、進捗状況を共有することで、スケジュールや予算の管理がしやすくなります。また、進捗状況の共有により、各メンバーの役割や責任を明確にすることもできます。
工数入力を正確に行い、作業実績の入力漏れを防ぐ
工数管理において、正確な数値入力は非常に重要です。作業実績の入力漏れがある場合には、工数管理の精度が低下し、予算超過やスケジュール遅延のリスクが生じる可能性があります。作業実績を正確に入力するためには、入力ミスを防ぐための手順を定めたり、入力漏れをチェックする仕組みを作ったりすることが必要です。
メンバーのワークロードを可視化する
メンバーのワークロードを可視化することで、各メンバーの負荷を正確に把握することが可能です。これにより、メンバーの負担を平均化することができ、モチベーションの維持や生産性の向上、コミュニケーションの促進につなげることができます。可視化の方法としてはカレンダーやスプレッドシート、専用のツールなどがあります。
外部要因やリスクの影響を考慮した予備工数の確保
プロジェクトには外部要因やリスクがつきものであり、これらを考慮せずに進めると、予期せぬ出費やスケジュールの遅延などの問題が発生する可能性があります。あらかじめ予備工数を確保しておくことで、プロジェクトのスケジュールやコストのリスクを軽減することができます。
プロジェクトを成功に導くには
工数管理はプロジェクトの成功に大きく影響する重要な要素です。適切な工数管理を行うことでプロジェクト遅延の防止や納期管理などが容易になり、スムーズなプロジェクト進行により従業員のモチベーション向上などの効果も期待できるでしょう。
一方で、工数管理だけでは気づきにくいプロジェクト管理失敗のリスクも存在します。たとえばプロジェクトメンバー同士の人間関係の悪化や、検査を行わないとわからないような目に見えない品質の悪化などは、その影響が作業工数の増加というかたちで顕在化するまでプロジェクトマネージャーの目に止まらずにひっそり悪化が進んでいく可能性があります。
そうしたプロジェクトに潜むリスクを早期発見するには、「PJ Insight」の活用がおすすめです。
PJ Insightは、毎週1回、メンバーに対して、プロジェクトの品質、納期、コストやコミュニケーションなどの項目について、5段階評価で回答するアンケートを実施します。その収集結果を時系列データにして、プロジェクトの状況を可視化します。
作業工数の増加というかたちプロジェクトマネージャーやPMOの目に止めることがない問題でも、データの推移からプロジェクトが低迷傾向にあるなど察知することが可能です。
また、PMOはプロジェクトマネージャーの報告だけでなく、現場のリアルな声も把握することができ、適切な支援を行うことが可能です。
PJ Insightを活用してプロジェクト現場の見える化に加え、メンバーから本音を聞くためにも、メンバーがリスクを負うことなく、信頼関係に基づいて発言できるカルチャーを醸成していくことも大切です。 PJ Insightは、アンケート、プロジェクトの現状把握、課題の早期解決のサイクルを繰り返し、プロジェクトの状況を継続的に改善する、プロジェクトのヘルスチェックツールです。
30日間の無料トライアルをご用意していますので、ぜひこの機会にPJ Insightの導入をご検討ください。