PMとPMOの違い

まず、PMとPMOの違いを簡単に整理しておきましょう。

PMとは

PM(プロジェクトマネージャー)とは、特定のプロジェクトに対して責任を持つ人物で、プロジェクトの計画、実行、監視、制御、完了までのすべてのフェーズを管理します。

PMOとは

一方、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)は複数のプロジェクトを管理するための組織または部門であり、PMを支援し、プロジェクト管理の標準化やプロセスの整備などを行います。PMO自体は個別のプロジェクトを担当するわけではなく、組織全体のプロジェクト管理を効率化し、標準化することが役割です。

PM、PMOの役割を考えるうえで重要なポイント

そして、これらの定義に加えて「どちら側のPM、PMOなのか」という点が重要になってきます。

システム開発をSIerに委託する場合、委託先のSIerにPMが存在していることに加え、PMOの役割を担っている組織も同時に存在することが多くあります。委託元、事業会社側でもPMは存在していますが、PMOを担っている組織はない場合が多いかもしれません。

例えばSAP等の基幹システムのリプレースを行うといったプロジェクトの場合で考えてみましょう。

この場合、PMタスクの多くはSIer側に任せることになります。事業会社側のPMはSIer側のPMからの質問や依頼事項に答えるということが多くなるでしょう。SIer側はSAPのリプレースを数多く行っていますので、それらの知見からPMOとしてプロジェクトマネジメントの標準化を進めているはずです。さまざまなプロジェクトのノウハウを横串で整理して、各プロジェクトで使えるようにするというタスクはSIerにとってはある意味当然で、それらをPMOが担っているわけです。一方、事業会社にとっては同じようなプロジェクトが何度も立ち上がることは少ないため、PMOロールがない場合があると考えられます。

AI活用・データ活用……DX時代におけるシステム開発の難しさ

そんな中、AIやデータ活用などを中心としたDX時代におけるシステム開発では事業会社側でもPMO組織、またはPMOの役割は必要になってきています。

DX時代のシステム開発の特徴としては以下が挙げられます。

  • 明確な業務要件が決められない
  • やってみないとどこまで要求を満たせるかわからない
  • PoCなど小さく進めていくことが多い
  • 従来委託していたSIerではなく、特定分野に精通した会社に依頼することが多い

委託先のSIerは要件が決められない、どこまで実現できるかわからないといった性質のプロジェクトを運営していくのは得意ではありません。なぜならPMOが標準化したプロセスが適応できないからです。工程別のチェックシートなどがあったとしましょう。生成AIを活用して、社内ナレッジから文章を生成し回答するシステムを作ろうとしていたとします。回答の精度はやってみないとわからない状況です。そのような状況下では、PMOが定義した「要件定義完了チェックシート」はほぼOKにならないでしょう。

このように不確定要素が大きいプロジェクトにおいては委託元、事業会社側で責任を持ってしっかりと管理していく必要があります。

委託先のSIerにお任せ、丸投げではDXプロジェクトを推進していくのは難しいのです。

DX時代に求められるPMOの役割

では、事業会社側でDXを推進するうえで必要になるPMOの役割はなんでしょうか?

一番重要なのは各DXプロジェクトの優先順位や予算の策定、小さく進めていく方針づくり、次フェーズに進めるか否かなどの判断基準の設定など、いわゆるPPM(プロジェクトポートフォリオ・マネジメント)の部分になります。これは一般的なPMOでも重要視されるタスクではありますが、一般的な開発プロジェクトのPPMよりDX推進におけるプロジェクトは常に流動的であるという特徴があります。このため、小さく始めたプロジェクトの結果から次のステップに向けて、全体の中での優先順位やプロジェクト規模を都度修正しながら柔軟に進めていく必要があります。

次に重要なのが各PMを指導し、育成していくロールです。

DXのプロジェクトは委託先のPMにお任せではうまくいかないことは先に説明しました。そうなると事業会社側のPMがしっかりプロジェクトを管理していく必要があります。委託先の管理も含めて行う必要があります。しかし、事業会社側のPMは経験豊富でない場合が多いでしょう。SIerのようにSEからPL、PLからPMと経験してきたわけではないでしょうから当然のことです。そうなるとPMをサポートして育成していくロールが必要になります。NCDCではそのロールこそ事業会社でのPMOの役割だと考えています。

事業会社のPMOにとって、PM・PMO経験が豊富な人材を中途採用し体制を整えることは良いことだと思います。そのうえで生え抜きのPMと定期的にジョブローテーションし、スキルを高めていくことも有効でしょう。

NCDCではこういったことにチャレンジされている事業会社に向けたPMやPMO内製のためのコンサルティング実績が豊富にあります。

PMOによるPM育成のためのプロジェクト管理ツール

また、PMOによるPM育成のためのプロジェクト管理支援ツールPJ Insightも提供しています。

PJ Insightは、各プロジェクトメンバーの毎週のアンケート情報に加え、PMからPMOへの週次レポート、PMOからPMへのアドバイス等を一元的に管理・可視化するSaaSです。プロジェクトの週次レポートや定期的なPMの面談、各メンバーとのOne on Oneなどを業務に取り入れている企業であれば、すぐにご活用いただけます。PJ Insightを導入することで効率性と可視性が向上し、PMのスキルアップにつなげることができます。

事業会社でDXを推進する際は、自社でPMO、PMを育成して企業の変革に取り組んでみてはいかがでしょうか? NCDCのコンサルティングサービスやSaaSが強力にバックアップいたします。